鈴虫の家出 【半日も経たずに不審者が】
さあ、爆音イビキ野郎鈴虫は居ない。さあ、快眠じゃー。
となればいいですね。人間って、そんなにスッキリ割り切れませんよ。
この夜も、体は水平にしていても、脳は緊急事態発令中。ピリピリしたまま。
どうせ寝れないのなら、何か飲んで落ち着こう。階下の台所に向かった。
2018年9月24日(月)未明。外は明るくなりはじめた。戸棚のお茶に手を伸ばした。
その時、2メーター先の玄関外で音がした。てことは、、、、。
【鈴虫⁈】
【あああ、やっと冷静になれたんだ。】
鈴虫と松虫達の喧嘩は、大体松虫が我慢して我慢してついに爆発。溜まった不満を一気に吐き出す。すると、どうして我慢せずその時に言わないんだ!俺を信用してないな!と怒って鈴虫が出て行く。ひとり家を出た鈴虫は。ドライブしてみたり、お店の倉庫で一夜を明かしてみたりしてから、松虫の元に戻って来た。
「ごめんね。松虫の忙しさを理解していなかったよ。」
と、謝って仲直りするのが、常だった。何処に行って何をしていたかを鈴虫は話した。
「結婚式のホテルを一周したんだ。あの時の気持ちを忘れていたなって思ったよ。」
そんなこと言われちゃ、誰だって仲直りしますでしょ。
他だと、よく行った公園とか初めてデートした街だったり。そんな所をドライブして、頭を冷やして考えていたと松虫に告げていた。
でも今回のは、今までとは明らかに違う。ここまで激しい言い争いは、過去にはない。これでは、早すぎる。こんなに早くては、不安になった。
鍵穴を回す音。玄関引き戸を開ける音。中に入る音。そして引き戸を閉める音。それら一連の動作に生じる音を、出来るだけ中の家人に悟られまいと、細心の配慮をしているのがわかる。
【じゃ何⁈ 泥棒⁈】
【ええ⁈ こんな、ボロ屋に⁈】
【そんな、バカな⁈】
不倫の果て 【船虫とふたりになって】
鈴虫は出て行った。
松虫と船虫だけとなった。「あ、夕飯まだだったね。」
何を作り食べたか忘れたが、食後船虫に聞いてみた。
「なんで、殴って止めようとはしなかったの?」
すると船虫は、鋭い見解を語った。
「アイツ、相当イカレちまっているよ。狂ったな。」
「あんな奴、いない方がいいじゃん。」
「なんで、あんなヤツ、引き留めんのさ。」
「あんなの、引き留める価値ないじゃんか。」
「アイツ殴ったらよ、アイツ俺の事、傷害罪で訴えやがるぜ。」
「そしたら、俺の人生台無しじゃん。」
【ああ、船虫‼ 】
そうだ。その通りだ。船虫ごめんよ。ごめんよ。
あんたの手を、あんたの人生を汚すところだった。
ごめん。ごめんなさい。
そして、ありがとう。船虫がいてくれて本当に良かった。
食後船虫の前で、松虫は思いっきり泣いた。
そうだ。この時まで、松虫は泣いていない。どうすれば、どうしようかと頭も心もフルスロットルさせていた。どうしても軌道修正したかった。泣いている場合じゃない。私が泣いたところで、何も変わらないことは、明白だから泣くことを後回しにしていた。
次男団子虫は2018年4月から愛知県に就職。5月6月はディーラー研修で自宅に居たが、9月は居ない。長男船虫は航海士。3か月海上勤務、1ヶ月休暇で、丁度休暇中だった。
この日もそうだが、後に何度も船虫に助けられた。こんなに船虫に助けられるとは、正直想像していなかった。この子は、私が守らねばと思っていた。
それは鈴虫もそう考えていた。まだ店が安泰だった頃、
「船虫には、店の段ボール箱片付けでもさせてやりゃいいさ。」
なんて、のんきなことを言っていた。そんな船虫は、親なんか頼らず航海士。
片や鈴虫よ。W不倫して開き直り、人の金に手を付け、お次は叔母に金の無心かい。
見事なまでの、右肩上がりと右肩下がり。
私が眩しいと感じたあの鈴虫。
私が愛したあの鈴虫。
どこまで落ちれば、戻って来るのでしょうか。
いや、そもそもが幻だったのか。
不倫の果て 【ここまで腐った鈴虫】
荷造りをし終えた鈴虫は、車の鍵を返せと松虫に迫った。
鈴虫を引き留める気力は、もう前日ほどない。冷静な思考となるには、時間が必要とも思えた。しかし、親子の絆は別物だ。親子の仲も、鈴虫は捨てる気なのか?
いや、ありえる。ボイスレコーダーで親子の情愛を、バッサリ切って語っている。
この間の一部始終を、船虫は居間で聞いていた。一言も発せずに居た。
「ねえ、このオッサン一発殴って、目を覚まさせてやってよ。」
ふと、船虫に頼ってしまった。そうだ!船虫よ、何か言ってくれよと、すがった。
すると船虫は
「嫌だよ。」
と、小さく呟いた。それを聞いた鈴虫は
「だよな‼ このオバサン狂ってやがるよな。」
「人を縄で縛る気かよ。なっ、船虫。」
鈴虫は、味方を得たと歓喜の表情だ。
船虫は、下を向いて暗い表情まま。確かに「嫌だよ。」の声は震えていた。
今一度、出て行こうとする鈴虫を見た。ズボン左ポケットから、私の黄縞の財布が半身出ていた。その財布は、5000円、1000円のピン札ストック用だ。
「置いて行きなさいよ‼ それ、私の財布よ‼」
「なんだよ! これっぽっちの金‼」
黄縞財布を床に投げ捨てた。すると柱にセロテープで止めた2万円が入ったビニール袋に、手を伸ばした。
「それも、置いて行け! ここで暮らすならと思って置いた2万だ!」
「じゃ、俺はどうすりゃいいんだ‼ あ、叔母さんに貰おう。」
【はあ⁈ 叔母さんにたかるんかい】
鈴虫が持ち出そうとした黄縞財布と同じ場所に、赤縞財布も松虫は保管していた。
赤縞財布は、ピン札10000円保管用だ。しかし、その赤縞財布が半年以上前からなくなっていた。
急な出費で使ったのか?どこか違う所に仕舞ったのか?次男団子虫が取ったか?
いやいや、どれも違う。今回の鈴虫の行動から、犯人が判明したよ。
鈴虫よ、お前が使ったな。15万ぐらいはあったぞ。ここまで腐っていたか。
不倫の果て 【ここまでイカレた鈴虫】
自宅に着き、トランクから荷物を出した。
買物袋の下から、長男船虫のリュックを見つけた。1-2か月前、研修に行くのになんかリュックはないかと、鈴虫が言ってきた。航海中で使っていない船虫のリュックを、松虫は差し出していた。
「あああ、鈴虫たら、船虫に返してないじゃん。」
松虫はそのリュックを持った。「⁈ 重い。」
リュックを、明るい居間へと運んだ。そして中を確かめた。
【コンドーム】
【ピンクのローター】
【絵具筆】
まだ外に居る鈴虫に、取り上げられては大変。
大事な証拠の品だ。
とにかく隠さなきゃ‼
買物の収納。夕飯の支度。もう、それどころではなくなったt。
リュックの存在を。そして中身がバレたと知るや、鈴虫は血相を変えて叫んだ。
「あのリュックは、団子虫のだ! 俺じゃない!」
あれまー‼、人に擦り付けますか。それも、息子に‼
研修で使うと、私が渡したこと。団子虫は、この手のリュックは使わないこと。
等々を言うと、弁の立つ鈴虫だが諦め、これは逆にチャンスとばかり
「もう、出て行く‼ やってらんない‼」
とわめき始めた。ここでも罪悪感なしだ。さすがとしか表現出来ない。
息子のリュックにこんな物を入れ、返さずにいた鈴虫‼ せめて、息子船虫に対してだけでも謝罪しろや。親だろが。信じられないぜ。
松虫はもう、引き留めはしなかった。
何処に行くのかと聞けば、松虫に片付けさせたあの実家という。やっぱね。
もう夜も遅いし、急に行くと年寄りは驚くから、電話してから行けと言った。
すると、鈴虫は豹変した。それは、未だかつて聞いた事がない。まるで別人だ。
「かあさん、うん、俺えー。今から、そっちに行くね。うん。泊まるよん。」
舌っ足らずな、甘えた猫なで声で話すのだ。さっきまで、リュックを渡せと脅した人物と全く別人。驚いたのなんの。
【二重人格⁈】
そう感じた。松虫は、鈴虫に受話器をよこすようにジェスチャーした。
きっと渡さないと思ったが、これがすんなり渡した。
「お母さんは、この人不倫しています。そっちに行っても決して入れないでく
ださい。お願いします‼」
すると、鈴虫は再び豹変した。鬼の形相で罪悪感とは無縁の発言をした。
「この女、騙しやがったな‼」
「絶対信用しない‼ 絶対信用しない‼」
どうですか?どう思いますう?
あの雪の日と同一人物ですよ。
騙したのは、鈴虫。
W不倫は、鈴虫。
信用できない人物は、鈴虫。
だからやりたい放題なんですよ。
女郎蜘蛛の毒は、強烈だ。ここまで人格を狂わすとは、、、。
キラキラした思い出 【雪の日のこと】
ブログ開設から、早一か月が経った。
Tシャツ裏返しの2018年9月19日(水)から、不倫告白の20(木)、家出未遂騒動の22(土)、最後のお迎え23(日)。まだたった5日間のことだけしか記せていない。でも、まだまだ伝え足りないことだらけだ。
お店の会計を終え、自宅に戻り、結局鈴虫は家を出る。その事態は長年生活を共に過ごした松虫でも、いや、松虫だからこそ、この急変には驚かされる。そして罪悪感のない鈴虫の発言の数々。
それは、あまりにも【キラキラした思い出】が多いためだ。
婚約指輪廃棄事件の鈴虫。あんなに心暖かかったのに。
<詳しくは9月28日付け、閻魔大王にもなるわさ 婚約指輪編>をご覧ください。
松虫の母だったら、一生グチグチ責め立てられたわ。ああ、恐ろしい。
鈴虫、あの雪の日のこと、覚えている?
まだ長男船虫が小学校1-2年生で、次男団子虫が2-3歳頃。大好きだった父のお墓参りに二人を連れて行った。墓は隣の県とはいえ、当時の家からは13キロほど。帰りデパートのおもちゃ売り場で、展示の見本品でふたりを遊ばせてから駐車場に行くと、雪が降り積もりだした。都会の雪なんてちょろいさと、車を運転した。県境の一級河川に掛かる橋に来た時、ハンドルが安定しなくなった。ノーマルタイヤなのだから当然だ。橋を渡り切った先のガソリンスタンドに迷わず入った。当時、携帯はあった。店に居るであろう鈴虫にかけるが、繋がらない。自宅にかけても繋がらない。当時メールなんてないし、鈴虫用の携帯もない。ガソリンスタンドで連絡を待つも、鈴虫からの連絡は来ない。雪は更に降り続け、ふくらはぎあたりまで積もった。もう国道を走る車もなくなった。その時、ランドクルーザーが1台ガソリンスタンドにやって来た。
【これじゃ‼ これきゃない‼】
ヒッチハイクを願い出た。見ず知らずのランドクルーザーさんに。
8キロほど先の松虫鈴虫の家まで、お願いした。
しかし、あと600メートルの辺りから積雪が膝を超す程に積もっていた。
ここまでで、ありがとうございますと、一万札をお渡しした。ランドクルーザーさんの家族は、さぞ心配したことだろう。雪の中近所のガソリンスタンドに灯油を買いに行ったきり、まだ帰って来ない。事故にあったのではと。その節は、誠にありがとうございました。
さて、大雪の中を3人で歩く。次男団子虫には腰まである。私が抱っこした。長男船虫は、ぐずるかと思いきや、嬉々として雪道を歩いてくれた。いつもなら、そこそこ交通量のある道だが、今は車1台すら通らない。通った跡すらない。歩く人も皆無。足跡も全くない。わざと転んではしゃぐ船虫。それを見て笑う団子虫。ふたりの明るさに救われた。
すると遠くから、坂を下ってくる人影が。だんだん近づいて来た。
なんと、鈴虫だ‼ 駆け寄ってきて
【この道から来るような気がしたんだ。】
長男船虫を抱っこし、4人で家路へと向かった。
一面真っ白な雪景色。二人の足跡だけが深く刻まれた。
あの鈴虫はどこに行ったのでしょう。
2018年9月23日(日)、買物を終えて自宅へ。自宅は、あの雪の日とは違う場所。
何よりも鈴虫は、変わった。あまりにも変わった。
最後のお迎えで、買物をした。その荷物をトランクに積み込み、自宅で降ろす。
ああ、ここまで鈴虫が豹変するとは、、、。
ならば松虫も、変わらなくてはならないようだ。
松虫にボロ屋 鈴虫にGTR
松虫家族の家のボロさを、紹介します。
昭和49年築、木造2階建て。
外壁内壁ともに、無数の亀裂入りまくり。雨漏りは2か所。内1か所は、電気配線にも影響し、照明が点灯しない。床、階段、全うぐいす使用。ギシギシ鳴りっぱなし。船虫の部屋のドア枠は歪み、松虫が歩くたびに、「ボン!」と歪みが弾けて音を立てる。まるでノックしたようで、中に居る船虫に「何か用かい?」と、聞かれる始末。
水道管は錆が吹きまくり、出が悪いわ、出ても濁り水‼ 飲料に適さないので、松虫と船虫は空のペットボトルを車のトランクいっぱいに詰め、他所へ水を汲みに行った。
1っか月ごとに汲みに行かないと、なくなった。
ガスコンロは3口中、2口が錆て点火しない。残りの1口は、ゴーゴー異音を立てる。
こんな家の住人が、GTR⁈
他にセルシオもあり、車両は3台。
そして極めつけは、船舶‼ しかも有名マリーナ係留‼
なんという、身分不相応‼
なのに何故、松虫は声をあげなっかたか。
それは松虫の母との事が起因する。
母は何かと松虫のやることにダメ出しをした。特におこずかいの使い道にはうるさい。
「そんなことに、金を使うな」
「無駄使いせず、しっかり貯めろ」
「1円でも無駄にするな」
等々言う。松虫にはたまらなかった。若い頃は、それこそバブル‼ 浮かれた男女が海外旅行に行きまくっているのに、友人との国内旅行でさえ、烈火のごとく松虫を責めたてた。母の金ではない。自分の給金からなのに、こうなのだ。
そんな体験から、人の金使いに口出ししたくなかった。それは、母のあの行為を肯定することになる。ま、そう考える時点で、充分母の呪いに縛られているわけですが。
だから、楽しそうに車、船で遊ぶ鈴虫が、松虫には眩しかった。
松虫には出来ないことだ。
母を無視して旅行に行っても、「もし、怪我をしたら叱られるかも」と、怒る母の顔、声が浮かぶ。スキーなんかだと特にそうで、「随分、慎重に滑るね」と友人が言ったもんだ。家に帰って「ああ、疲れたあ」なんて素振りでも見せようもんなら、「もう、行くな‼」と言われる。だから、やたらひとりで休憩をした。これじゃ、人生楽しくないわ。これも、今だからわかること。
さて、このボロ屋は、2011年9月下旬から住んでいる。店の経営が悪化し、ここに引っ越した。当時の土地建物の名義は、鈴虫と鈴虫の母親。ローン返済終了しているので、家賃がかからないのが最大の魅力。
鈴虫がまだまだ、女郎蜘蛛に出会わない頃のことだ。
不倫者鈴虫の金銭感覚 【その功績と功罪】
松虫が鈴虫によく言ったセリフを、覚えている?
それは一方で,松虫自身に言い聞かせていたんだよ。
結婚から現在まで鈴虫が道楽にかけた金額を集めれば、軽く都内23区内に家が買えるだろう。そこそこの物件が。
両親からの遺産が、ガンガン減っていく現状。どれだけ不安だったことか。そんな松虫の気持ちなんか、全く知らないだろうね、鈴虫は。
その上に、不倫。それもW不倫‼
それなのに罪悪感がない.‼ 松虫にも。松虫家族にも。女郎蜘蛛の家族にも。あろうことか、調停員に尋ねられてもない!
てことは、本気で自分の行いは正しいと。自分こそ被害者だと本気で思っているんだ。
どういう神経か、全く理解できなかった。まだ鈴虫が家に居たこの時点では、きっと前頭葉が詰まりだしたんだと、鈴虫の体を本気で心配していた。鈴虫の父親がなっていたから、充分可能性がある。とはいえ、、、。
ああ、ああ、どこまでも、どこまでも、おめでたい奴だよ、松虫‼
さて、そのセリフとはこれだ。
車道楽は、次男が元を取った。
船道楽は、長男が元を取った。
だって、そう思わなきゃやってらんないよ。
長男船虫は、航海士。だから、船虫に。
次男団子虫は、自動車会社に就職。だからタイヤに似た団子虫に。
店を閉め、サラリーマンになっても、浪費癖は改まることはなかった。
2013年5月、松虫の母が亡くなり、2016年にやっと遺産が現金となって松虫の元に来た。すると鈴虫は、GTRが欲しいと言い出した。2016年の夏。
いくらするかもわからないが、あれだけ一生懸命に店をやって来たのに閉めざるおえない鈴虫が気の毒だった。自営だから、退職金もない。
【GTRに乗れずに死んだら、死んでも死にきれない‼】
【退職金が入ったら、必ず払うから。頼むよ。】
とまで懇願してきた。確かに前年の2015年に、鈴虫は大病をしている。そこを突かれると、もう出すと腹は決まった。確かに2020年には、8年間とはいえ、退職金が出される。ならばと。
【GTRー R35 プレミアムエディション 走行距離480km 730万円】
そう、これが間違いの始まりだった。
今だから、気付ける。簡単に、わかるじゃん。
【やめとけ‼】
そんなことに金を使うなって。
こんな、ボロボロ屋に住んでいるのにと。
2016年夏。
鈴虫はまだ、女郎蜘蛛とは出会っていない。