夫鈴虫のやりたい放題

裏切り夫に、翻弄されています。

裏切り者。豹変者。

22㈯かの夕食後のことだ。 鈴虫は携帯と充電器を二階から持ってきて、食器洗いをする松虫に向かってこう言った。

     「これからは、ここで充電するね。だから、もう疑わないでよ。」

と、リビングのコンセントに差し込んだ。 そしてこうも言ってきた。

     

     「俺から誘ったのに、俺からは別れられないよ。」

 

松虫には、だからどうした的なものだが、鈴虫にはこれぞ葵の御紋とでもいう理屈のようらしい。 ああ、仕方ない‼ 食器洗いを中断し、松虫は

     「いつも奥さんの手作り弁当を広げて、あんたは食べているんだよ。お店の   

      人達全員が、妻帯者と知っている。 先がないことは、承知じゃん。」

でも別れるのは無理だよ的なことをいうので、まずは【別れよう】とメールで伝えてみればと言うと、そうだね。と鈴虫はメールをし送信した。

     「うわー‼ 送っちゃったー‼ 送っちゃったよ。」

と騒いでいる。それぐらいサッサとしとけや! 何大騒ぎしてる‼ 妻帯者が。

と松虫はイライラした。 その後何の話題か忘れたが、鈴虫と女郎蜘蛛とのことでだろうが、松虫を【ムカッ‼】とさせるセリフを受けた。もうボイスレコーダーのない松虫は、どこかに気持ちをぶつけられる。

       【あら、不倫者の携帯電話が】

鈴虫の携帯電話を充電器から引っこ抜き、床にたたきつけた。

しかし床はクッションフロア。 衝撃音はショボい音しかしない。 携帯は無傷。これではスカッとなんか出来ない。 よし、もう一回投げ付けてみるか。

 

すると鈴虫は烈火のごとく、松虫に怒った。

    「今朝、怒ってくれて、ありがとうって言ったじゃん。安心したって言ったじ    

     ゃん。なんで怒るの⁈ ねえって⁈」

鈴虫は松虫の問いかけを無視し、携帯電話や充電器、仕事用鞄、着替え等々を集め

     「こんな所には、もう居られない‼」

     「出て行く‼」

と騒ぎながら荷造りをし、玄関へ行こうとした。 この鈴虫の豹変ぶりには驚いた。

 

しかし、ボケっとしてはいけない。 止めなくてはと、鈴虫のベルトの端を思いっきり引っ張った。たら、どうだろう。 あっけないほど簡単に、鈴虫がひっくり返った。 90キロ近くある男が、コケたのだ。  

この時、やっとスカッとした。   【やったー‼‼】