閻魔大王にもなるわさ 昔の鈴虫編
松虫と28年間の家庭を捨てる。 W不倫女郎蜘蛛のために。
これだけでも充分、閻魔大王になる権利はある。
しかし、これだけじゃないから、【鈴虫のやりたい放題】なんですよ。
鈴虫が逃げ込んだ実家。 その2階3部屋には、以前住んでいた鈴虫の兄家族4名分の不要となった家具、所帯道具、書籍等々が、ごちゃまんとあった。 でっかい日本人形、雉の剥製まであって、不気味。 それらを鈴虫は6月辺りから、片付けはじめていた。
その前に、荷物を勝手に処理していいものかを弁護士に相談に行っている。ここが今思えば、妙な行動だった。 鈴虫は、対外的な場所が大の苦手‼ だから、役場や銀行や税務署等々は松虫が請け負っていた。 その弁護士だって、松虫が以前お世話になった方だ。長男船虫が、同級生に殴られた。今後どうすればいいかと相談したのが始まりで、その後松虫の兄による母の遺産独り占めの際もお世話になった。
今までならば、松虫に相談に行かせるのに。
ひょとしたら私は軽く断ったのかもしれない。なにも急を要する訳でもないからと。すると、自分ひとりで弁護士事務所に行って相談した。 勝手に処分してもたいして問題ないと知ると、片付け始めた。 そしてその作業が、いかに困難かを松虫に説明した。
鈴虫と松虫は、割と困難の数々を乗り越えて来た方だった。その度に、夫婦の絆が強くなった思うところが多かった。 ならばと、7月には松虫は片付けに参加した。
確かに凄い量であった。二人で同じ作業をしてみると、自営業時代を思い出す。2012年までは、常にふたりは一緒だったのだ。
すると納戸から、捨ててしまったと諦めていた、私達の婚約指輪を発見するのだ。
11-12年前あたりから自営業が苦しくなり、2011年9月下旬に引っ越しをした。広さは1/3以下の集合住宅。 そうなれば当然、いろいろ捨てなくては入らない。
引っ越しも落ち着いた頃、段ボール箱から【指輪パッカ!】の箱外側の木箱を更に包む紙箱を見つけ、松虫は青くなった。
【これ、捨てる方じゃん⁈】
【中身を捨てた⁈】
おそるおそる開けるまでもない。明らかに軽い‼ やってもうたー‼
どうしよう。 黙っていてもバレやしない。 あの手の指輪は、日常めったに使わない。 でもでも。 悩んだが捨ててしまったみたいだと、鈴虫に告げた。
すると、さすが弁の立つ鈴虫。こう言った。