松虫、怒りを吐き出す
【遠出は一回だけってのも、嘘じゃん‼】
【どういう、ことなんだよ!!】
松虫は、いままでの我慢という我慢を吐き出した。足音も激しく、唸り声をあげて爆音熟睡中の鈴虫がいる二階寝室に突入した。
嘘だろ⁈ 奴は、起きないのだ。タヌキ寝入り、決め込む気か⁈
それで済む訳ないだろが。思いっきり耳を引っ張り、その耳に大声で叫んだ。
「これはどういうことなんだ‼」
「やっと怒ってくれた。ありがとう。これで安心したよ。」
爆睡から即の、この返答。予想できなかった松虫は、固まった。
すると、そんな松虫を抱き寄せて、
「怒ってくれて、ありがとう。これで、安心した。ちっとも怒らないから、な
んか裏があるんじゃないかと思っちゃった。」
【ドキッ‼】
「これからは、ちゃんと怒ってよ。」
と甘い声でのたまうのだ。寝起き早々にこれだよ。
ほらね、弁が立つでしょう。
ここから鈴虫の被害者面計画に、松虫はハマった。
それは、いつから計画されていたのだろう。
だれが⁈ 鈴虫単独か? 女郎蜘蛛が糸を引いているのか?
当時の松虫は、そこまで考える余裕はなかった。現実が、情報が、松虫の理解力を大きく超えるスピードで、次々と迫ってきた。さらに爆音による睡眠不足。血圧上昇。頭痛吐き気。食欲減退。長男船虫との伊豆でのチャージがなかったら、この魔の4日間を乗り切れなかった。
【船虫、ありがとう】
今後松虫は、長男船虫に何度も何度も助けられる。船虫、ありがとう。