閻魔大王にもなるわさ ゴミ処理編
昔の鈴虫は確かに、あの時代には居た。 だが、だが
「指輪が出て来たよ‼ 良かったじゃん‼」
鈴虫は言う。指輪が見つかった。確かに形はある。けれど、あの頃の鈴虫の想いを、あの7月には全く感じられないのだ。
何がどうしたではないのだ。 ぼんやりだが2017年の秋ごろから、鈴虫は変わっていった。<女子会>ならぬ店がらみの行事が増え、松虫家族との時間が減った。
そして2018年7月からの、ゴミ片付け作業。
久しぶりの二人での協力作業。
婚約指輪まで発見。
なのに、何かが違う。何でか。
ふと気が付けば、ゴミ片付け作業は松虫ひとりで行っていた。
8月頭には私だけで行っている。買い取り業者に売れそうな物を選別し、階下に運び車に積み込み、運転したのも松虫。多いときには、日に3往復したのも松虫。8月の暑い中、そんなことを何日も繰り返したのも松虫。不要家具の引き取り業者の代金も、松虫持ち。 最後のゴミ処理業者の代金も、松虫持ち。
すっかり片付いた3部屋を見て鈴虫は
「ここで、いつでも暮らせるな。」
満足げな笑みと、空想に浸った笑みを見せていたんだ。
【利用しやがったな‼】
鈴虫と女郎蜘蛛の新生活のために、松虫は働き、金まで出した。
8月中旬に、松虫は左足中指を骨折した。それでも作業をやめなかった。そうだ、パートも休まず、8時間立ち仕事をこなしていた。家計を支えねばと。
それが松虫の2018年8月。
閻魔大王になった経緯なのです。